応用講座

学習内容



応用講座は1〜4に分かれています。以下にその内容を示します。

応用講座1 XAFS
XAFSとはX-ray Absorption Fine Structureの略であり、X線吸収微細構造と直訳されています。非晶質の物質に対してその原子レベルでの構造を調べる際に最も強力なツールであり、試料によるX線の吸収率を測定する実験手法であると いえます。XAFSには吸収端の極近傍(-50〜+50eV程度)のエネルギー領域と、吸収端から+50〜+1500eV程度離れたエネルギー領域の2つの領域の解析があります。前者はX-ray Absorption Near Edge Structure (XANES)、後者はExtended X-ray Absorption Fine Structure (EXAFS)といいます。この講義ではXAFSの基礎と応用について学びました。

応用講座2 生体イメージング
放射光を使った医学利用の研究は1970年代後半から始まり、放射光利用研究において日本で発達した分野として、腫瘍移植した実験動物を使った微小血管造影による癌の診断法や治療法の研究があります。放射光と高解像度画像検出器の組み合わせ で、従来不可能であった内径20〜30μm及びこれ以下の血管の造影による画像化を実現しました。本研究では2次元動態画像撮影である微小血管造影と、3次元マイクロCTでの標本の立体構造解析を腫瘍に栄養を供給する腫瘍新生血管の観察に適用して、より精密な腫瘍研究 への展開を目指しています。この講義では微小血管造影やマイクロCT、屈折強調イメージングについて学びました。

応用講座3 軟X線分光
軟X線とは下は100eV、上は2〜4keV程度までの光の総称です。その下のエネルギーの光はVUV(極端紫外光)、その上は硬X線または単にX線と呼ばれ区別されています。どの波長までが軟X線でどの波長からが硬X線かは実は、はっきりした定義が ありません。軟X線の特徴は炭素、窒素、酸素などの内殻(1s電子)をちょうどイオン化ぎりぎりのエネルギーで励起できるところにあります。我々の身近な物質の殆どはこれらの原子を含んでいるので、軟X線により炭化水素や酸化物の内殻吸収スペクトルや光電子 スペクトルを測定することができます。しかし、軟X線実験は空気で吸収されるため高真空または超高真空中で行わなければならないのです。また、リング内も超真空になっているからこれに影響を与えないためにはチャンバーに至るまでの長い配管及び分光器全てを高真空 にして、かつ空気漏れ等のアクシデントが起きないようにする必要があります。軟X線は表面を調べるときに使われることが多いのですが、表面をクリーンな状態に保つためには非常に高い真空度が要求されます。こうして高真空にすることにより光電子分光などの様々な 観測技術が使えるというメリットがあります。この講義では軟X線により分子をイオン化の極限に励起する物理的な意味から、軟X線の分光技術、光電子分光法、二次元画像観測装置、軟X線蛍光分光法などの実験手法について学びました。

応用講座4 タンパク質結晶構造解析
タンパク質等生体高分子のX線結晶構造解析の手順は次のような流れになります。@結晶解析すべき試料の抽出・精製・結晶化、AX線回折データの収集とデータ処理、B結晶構造解析(位相の決定)、Cモデルビルディングと構造精密化です。 それぞれの手順においてタンパク質結晶学における独特の手法・技術が多く開発されており、研究者は自分の試料の構造解析に最も適した手法を選ぶことになります。この講義ではタンパク質結晶学で最も典型的な手法と立体構造を決定することによって何が分かるのか、 また構造生物学的アプローチによる生体分子の機能解明について、実際に構造決定した毒素タンパク質を具体例として学びました。